■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
☆番外篇 『グリーンピア13基地をすべて売却』

(2005年12月22日)

 厚生労働省は12月20日、厚生年金と国民年金の保険料積立金を投じて全国13カ所に建設・運営したグリーンピア(大規模年金保養基地)の13基地すべての売却・譲渡を完了した、と発表した。
 最後の物件となった「グリーンピア三木」は、地元の兵庫県に時価の半分の9億1855万円で同日、売却が決まった。この結果、国民の老後の資産である年金財源を使って13基地に対し、建設費だけで1953億円、維持費(修繕費、固定資産税、森林維持管理費など)を加えると3730億円(人件費は除く)も浪費した挙げ句、その全部を48億2000万円で売却したことになる。ざっと3682億円もの損失を出した形だ。
 にもかかわらず、厚労省は利用者に喜んでもらえたなどとして「ムダ遣い」を認めていない。そればかりか、経営破綻と巨額損失に対し、歴代の高官の誰一人、責任を取っていない。
 発表も、今回の完了の段階で簡単に行っただけ。それまでの個別の売却・処理経過は伏せ、事実上、情報公開をしなかった。
 官の無責任体制が改めて浮き彫りにされたが、その根っこは深い。グリーンピアの場合も法律に「施設をすることができる」とあるから、「施設事業を法に基いて行った、何らやましいことはない」(年金局幹部)という意識になる。国会は厚生年金保険法などの関係法を見直して、年金財源を本来の目的である年金給付以外に使えないようにしなければならない。
 グリーンピア事業には、明らかに折々の責任者が存在した。彼らは結果責任を問われて当然であろう。
 グリーンピア構想を具体化した1972年8月当時の旧厚生省の横田陽吉年金局長と坂元貞一郎事務次官が、まず「最初の責任者」に挙げられる。
 さらにグリーンピア事業の破綻が明らかになり、閣議決定で「事業の廃止」が決まった2001年12月当時と、すでに実態を把握していたその直前の複数の年金局長、事務次官にも責任をきっちり取らせるべきであった。
 閣議決定当時の辻哲夫年金局長と近藤純五郎事務次官の行政責任も重い。その前任だった矢野朝水年金局長と羽毛田信吾次官の責任も問われるべきだ。さらに説明責任を果たさないまま、情報公開を小出しにして年金問題をわかりにくくした吉武民樹年金局長(02年8月就任)と大塚義治次官(03年8月就任)の責任も追及されるべきである。
 なかでも近藤元次官の責任は重大だ。その前は年金局長を94年9月から96年7月まで務め、事務次官(01年1月から02年8月まで)を経たあと、02年12月にグリーンピア事業を推進した年金福祉事業団の看板を付け替えた特殊法人の年金資金運用基金(06年4月に名称を「年金資金管理運用独立法人」に変えて独法化の予定)の理事長に就任している。長期にわたり年金問題で影響力を振った責任者である。しかも、昇進昇格を続け、同省退職時には約9000万円もの退職金を手に入れている。
 これが民間なら、不良資産を抱えた経営責任を問われて株主代表訴訟などが起きるだろう。 ところが、日本の官僚は何の責任を取らなかったし、取らされなかった。異常事態と言うほかない。