NAGURICOM [殴り込む]/北沢栄
■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
<番外編>
官僚社会批判

何が我々の敵なのか

 拙著『公益法人』は都内の大手書店で次々ベストテン入りし、私のもとにも、手紙や当サイトへのメールなどを通して、読者からの励ましのお言葉が多数届いている。たいへんありがたく、また嬉しく思っている。

 反響のなかで意外だったのは、『日本国の研究』の著者、猪瀬直樹氏が、『週間文春』の自らの連載企画『ニュースの考古学』で、いきなり著者たる私と版元である岩波書店にケチをつけてきたことだ。

 先行する自分の業績に敬意を払わないと腹を立てたようだが、低レベルの批判でまともに応える気にならない、とだけ記しておこう。猪瀬氏の業績が「先行」していたかどうかはともかく、公益法人の追跡調査で、わたしのほうが深く「潜行」していたのは、たしかなようだ。さし絵にあるように、わが著書が『日本国の研究』を下敷きにしたというのなら、堂々と盗作(著作権法違反)で訴えればいいのである。

 公益法人問題で重要なのは、これまでどのマスコミも、当の猪瀬氏も、本書刊行時点までに「制度上の究極の問題点」をえぐり出さなかったことだ。つまり、上っ面だけの分析だったわけである。

 深層部の発掘が行われなければ、黄金(ナゾ解き)は見つからない。究極の問題点とは、主務官庁が公益法人の設立許可と指導監督を行う権限を握る「主務官庁制」である。

 この制度を定めた民法34条は1898(明治31)年に施行された古い法律だが、主務官庁は、「公益性」の定義がなく、主務官庁の設立許可を得ることが条件のこの民法を根拠に、「官」の裁量で公益法人を乱造してきたわけである。従って、真の処方箋は「主務官庁制の廃止」及び「日本版チャリティ委員会」の設置にある。そして日本版チャリティ委員会の「公益性」の判断・認定は、既存の公益法人とNPO(民間非営利団体)に対して「同一基準」で公平に行われなければならないのである。

 私は、本書の「はじめに」で「補助金の無駄遣いと官僚の天下り先の頂点にある『特殊法人』の実態は、ジャーナリストらの努力でかなり明らかになってきた」と書いている。明示してないとは言え、特殊法人に関する猪瀬直樹、佐高信各氏ら先達の労を多としてきたわけだが、「広大なすそ野ともいえる『公益法人』のほうは、未だ見通せない薄闇の中に」あるのも事実である。それはともかく、猪瀬氏が真剣に「官の聖域」に切り込もうとしているならば、拙著の登場をむしろ、援軍の到来と受け取っていただいて良さそうなものだが、振り向きざまに切りかかってくるというのは、どうにも理解できない。こればかりは、「右の頬を打たれれば、左の頬を差し出す」わけにもいかない。


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