■Online Journal NAGURICOM 沢栄の「さらばニッポン官僚社会」 |
第31章 行政改革に向け本格始動
「聖域なき構造改革」を公約する小泉内閣の誕生で、湿りっ放しだった行政改革の起爆装置が点火された。
小泉首相のかねてからの持論である郵政事業の民営化に加え、石原伸晃・行政改革担当相のもとで特殊法人・認可法人・公益法人改革が具体化に向けて一気に進む気運となった。
なかでも浮かび上がってきたのは、経済界からの要望が強い「規制緩和」と塩川正十郎・財務相のイニシアティブによる「特定財源の見直し」だ。
規制緩和については、内閣府に格上げされた総合規制改革会議が今後の道筋をつけることになる。同会議の前身だった行政改革推進本部規制改革委員会、その前の規制緩和委員会は営々と論議を重ねてきたにもかかわらず、肝心の「規制」のほうは官の抵抗から一向に減らなかった。
いや、中央省庁の「許認可件数」をみると、直近の統計である99年3月末時点で前年末より4.2%増え、計11581件に達している。金融システム改革関連が増えたのが原因といわれるが、これだけ「規制緩和」が叫ばれているのに全体として増加傾向に歯止めが掛からないのだ。
ダイエー創業者の中内氏は、社長だった7年ほど前、典型的な大型店を一つ出そうとすると、営業関係だけで19の法律、42の許認可事項をベースに実に200種近い申請書類を提出しなければならない、と語ったことがある。
この実態は、おそらく現在もほとんど変わらないだろう。規制の中には食品衛生法(食料品製造・販売)はもちろんのこと、クリーニング業法(クリーニングの取り次ぎ)、計量法(アステロイド系温度計販売)、郵便法(切手・印紙・葉書販売)といった“ふつうの人”にはなじみの薄いものも待ち構えている。日本では企業を起こすということは、嫌気が差してしまうほど面倒なのである。
この規制のしがらみが日本列島を隈なく覆っているのも、官僚たちが経済活動を許認可権限を使って直接規制したり、公益法人と組んだ「資格」や「検査」、「認定」づくりで事実上、新たな規制をせっせとつくっているためだ。 総合規制改革会議が小泉政権下で今度こそ、先送りしてきた規制撤廃・緩和を大きく推進して産業競争を促し、経済を活性化できるかどうか。
特別会計見直しにつながる特別財源の見直し
もう一つ、目玉として急浮上した「道路など特定財源の見直し」は、道路や空港整備、発電所の設置、エネルギーの高度化など、特定の行政サービスに使途を限定した税源が対象となる。道路整備財源はガソリン税や自動車重量税、地方道路税、石油ガス税などから成り、2001年度の税収予測は計ざっと4兆3000億円に上る。
特定財源の見直しが大きなインパクトを持つわけは、各省庁の「隠し財源」ともいわれる国の特別会計(現在37)の見直しにつながるためだ。
特殊・認可・公益法人の“三法人改革”が焦眉の問題となったいま、一般会計とともに補助金などの交付金を“三法人”に出しているのが特別会計だ。国所管公益法人の場合、総額3700億円(98年度)近い補助金の約三分の一が特別会計から支出されている。特別会計はいわば、郵貯、年金、簡保など財政投融資資金の受け手である一方、“三法人”への資金供給者なのだが、その資金の流れは情報公開されていない。
特別会計は国有林野事業を営んで大赤字の国有林野事業特別会計や、郵政事業を実施する郵便貯金特別会計など、いずれも独自の事業を持ち、各省庁の権限でガソリン税や郵貯、簡保積立金など独自の財源を手に運営される。一般会計と違って財務省主計局の査定を受けないから、各省庁にとっては「隠し金庫」であると同時に、財源と事業を併せ持つ「究極の聖域」でもある。 この特別会計の見直しにつながる特別財源の見直しを、小泉政権はやろうというのである。
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