■Online Journal NAGURICOM 沢栄の「さらばニッポン官僚社会」 |
第23章 「三つの不安」が景気を冷やす
大企業の業績は改善基調にあるが、相変わらず景気に火がつかない- 最近の経済動向をひと言でいえばこうなるだろう。なぜ、景気は力強く上向かないのか。最大のポイントは、GDP(国内総生産)の六割を占める個人消費が動かないからだ。
ではなぜ、個人消費に回復がみられないのか。その大きな原因は、1300兆円に上る日本の個人金融資産の半分以上を占める60歳以上の消費動向が低迷しているところにある。
なぜ、低迷しているのか。老後の不安からふだんは消費を抑えている、と考えていい。そごうの閉店セールやジャイアンツ優勝の記念セールにはわんさと押しかけるのだから、格安ならば買い出動するという「選択性」が強まっているのだ。
老後の不安の背景には、「年金」と「金融」、「財政」の三つの不安がある。
まず、年金不安だが、不安の根源は底をつかない給付水準の切り下げにある。厚生官僚たちは経済低迷が続き、保険料引き下げはこれを負担する企業と勤労者の所得をますます減らすことになる実態を無視して、公的年金の保険料を将来二倍程度に引き上げる必要がある、というキャンペーンを繰り広げた経緯がある(1998年)。
肝心なポイントは、サラリーマンの所得が二年連続減少していること、昨年度に過去初めて社会保険料の負担が国税のそれを上回ったことである。社会保険料はいまや国税以上にずっしりと重く収入を圧迫しているのだ。
にもかかわらず、厚生官僚は受給開始年齢の引き上げや給付水準の引き下げ、といった不安を引き起こすようなキャンペーンしか行わず、政治も財源問題などで抜本改革を打ち出していない。政治が官僚まかせだから、「このままいけば、給付水準は下がる」式の悲観的な見通ししか出てこない。
国の借金500兆円の重み
「金融不安」については、不良債権の処理がまだ終了にほど遠く、日銀のゼロ金利解除に伴う企業の借入金利の上昇、会計ビッグバンによる企業の含み損の表面化、2002年4月からのペイオフ解禁-とみると、不安はむしろ再燃していく恐れもある。
「財政不安」は、米信用格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが9月に日本国債の格付けを「Aa1」からスペイン、ポルトガル並みの「Aa2」に引き下げたことから火がついた。国のバラマキ型補正予算案とあいまって国債増発は歯止めがかからず、長期金利は上昇局面に入った。
大蔵省によれば「国の借金」の残高は、過去最高を更新してことし6月末にGDPを上回る500兆円の大台を突破している。「政」の構造改革への尻ごみと問題先送りが、旧来構造の温存にカネを費やし、財政を先進工業国中最悪の状況に追いやってしまったのである。
この「三つの不安」が続く限り、景気の力強い好転はありえない。
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