■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
特会仕分けでも「埋蔵金」発掘できず/無責任国家の正体(7)

(2011年12月26日)

民主党政権はそもそも「脱官僚」「脱デフレ」を目指すべきなのに、軌道を大きくそれてしまった。それて漂流した挙げ句、「財務省依存症」に感染してしまったのだ。
つれて政策の手順が、逆さまになった。デフレ不況下で起こった大震災・原発事故に国民と企業に負担増を求める「増税第一」で対応した。社会保障経費対策には専ら消費増税を充てた。 震災復興財源に特別会計(特会)の「埋蔵金」をはじめ「税以外の財源」は、ささやかな添え物として供されたにすぎない。パナソニック、ソニーなど日本のトップブランドが大赤字に陥る経済状況なのに、野田政権は「増税至上主義」に固まって顧みない。財務省の筋書き通りである。
「民主党が情けないのは、特別会計に切り込むと言って、できなかったこと」と、国民新党の亀井静香代表が日刊ゲンダイ11月3日付に正論を語っていた。 特会の歳出規模は345兆円超(10年度)と、一般会計95兆円超の3.6倍。この巨額のカネを各府省が握るが、そこに潜む「埋蔵金」を引き出せなかったのだ。

菅前政権は昨年10月、「事業仕分け」で特別会計を取り上げ、埋蔵金発掘への世論の期待が高まった。だが、仕分け開始の1週間前に、菅首相は突然「埋蔵借金もある」と言い出し、風向きが変わる。 最大の「埋蔵金」と目された財務省所管の外国為替特会の20兆円超に上る積立金。これが結局、円売りドル買い介入のための借金(財務省証券を発行し資金調達)と見なされ、「埋蔵金は実は借金」と仕分けされてあっけなく幕を閉じてしまう。背後には、むろん財務官僚の振り付けがあった。

財務官僚の悪知恵で腰砕け

特別会計の勉強会を会計士仲間と続けてきた大手監査法人の若手公認会計士がこう語る。
「あれ(埋蔵借金)で特会仕分けは腰砕けになってしまった。(政治は)またはじめからやり直さなければならなくなった」

特別会計は「へそくり」に似ている。これを管理する府省は、公然と表に出すのを嫌い、隠したがる。ひとつ違う点は、へそくりは「イザ一大事」の時にこそ活躍するが、特別会計資金の方は緊急事態でも引っ込んだまま出てこないことだ。 この隠された財源は本来、政治が引き出さなければならない。
へそくりの活用を考える場合、人はまず、「いま、どのくらい貯まっているか(積立金)、月々の出入りから生じる余裕の金はどのくらいか(剰余金)」からみていくだろう。
財務省によると、特別会計の積立金は182.4兆円超、剰余金は29.8兆円超(09年度決算)。この中から年金のような国民に直接給付する原資を除いて、資金難の一般財源への活用を考える必要がある。 ところが、肝心の特会仕分けで、埋蔵金の発掘成果はゼロ同然だったのだ。

それから1年後―。会計検査院は11月、国費の使い方を検証した10年度の決算検査報告を公表した。それによると、不正経理やムダ遣いは過去2番目に多い計4283億円超。 この中で、財務省所管の特定国有財産整理特会をやり玉に挙げた。国有不動産を保有し過ぎているとして、一般会計に所属替えして売却処分するように求めたのだ。
「特別会計」という官の金庫に、巨額の積立金や剰余金が眠っているばかりでない。遊休状態の資産が、公務員宿舎や庁舎、研究所などの不動産、現金・預金、貸付金、出資金、基金などの形で埋もれている。
民主党政権にヤル気があれば、増税の前に、これらの埋蔵金を即刻、掘り出して活用できる。これこそが「国民生活が第一」(09年衆院マニフェスト)への道である。