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沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
番外篇<速報>アメリカへの最初の移住者は1万6千年前に、舟で太平洋沿岸に来た可能性が浮上/石器技術は同時代の北海道出土品に酷似

(2019年9月2日)

米科学誌「サイエンス」8月30日最新号によると、北米大陸に初めて移住したとみられる後期旧石器時代の人々が居住した米アイダホ州西部にあるコロンビア川沿いクーパーズフェリー遺跡(地図)で国際考古学調査チームが発掘調査した結果、これまでの定説を覆し最初の移住が氷床が融けて陸の回廊地帯が現れる以前の1万6000年ほど前に遡ることが判明した。
当時、北方はすべて氷に閉ざされていたため、移住者らは陸路ではなく海上から太平洋沿岸に小舟でたどり着き、コロンビア川を上ってきた可能性が浮かび上がった。 狩猟に使う有茎尖頭器(stemmed projectile point)などの特徴(画像)から、北海道北部上白滝地方の後期旧石器時代の出土石器との類似性を指摘している。

従来の定説では、北米への最初の移住者(クローヴィス石器文化人)は、有力な見方では1万3000年ほど前に現ロシア北東の最果てにあったベーリング陸橋を渡って北米の氷床が融けたり薄くなってできた無氷回廊を旅して南下し、移住していったと考えられていた。 しかし近年は、カナダから南米チリに至る広範な地域にわたり航海ルート説を支持する論議が起こっている。 今回の最新調査で、これまでに考えられていた遙か以前に人々が太平洋航海ルートで北東アジアから米国にやってきたとの推論が初めて打ち出された。

調査は、米英日の考古学者ら17名から成る国際的な混成チームが担った。日本からは首都大学東京の出穂雅実・准教授と飯塚文枝・客員研究員が参加した。
今後は“沿岸移住”が「いつ、どのような航海法で、どこから出発して」実現したかが問われるようになる。 北東アジアから沿岸移住が行われたという仮説を検証していく中で、「北海道発のアメリカ沿岸移住」という可能性も、現実味を帯びてくるかもしれない。



(地図)クーパーズフェリー遺跡

出所: 米科学誌「サイエンス」ウェブサイト


(画像)北海道・上白滝地方の後期旧石器時代の出土石器との類似性

出所: 米科学誌「サイエンス」ウェブサイト


クーパーズフェリーの発掘現場

<ローレン・デイビス・オレゴン州立大学准教授撮影>