■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」

<番外篇> 瓦解した政権/大連立構想の策謀を砕け


(2011年8月22日)

民主党は、もはや政権政党の体を成していない。迷走した挙げ句、菅直人首相退陣の道筋がようやくついたのも束の間、今度は民主党代表選に立候補を表明した政権中枢の野田佳彦財務相が自民、公明両党との大連立構想を打ち出したからだ。

策謀の発信源

一体、この政権はわれわれ国民をどこまで欺けば済むのか。マニフェストをことごとく実現できなかったばかりでない。 肝心要の公務員制度改革で、現役出向や民間派遣に形を変えて天下りを認める裏取引を行い、官僚の言いなりになってきた。平気で変節し、裏切ったのだ。
野党時代に大看板にしていた「政治主導」の破綻である。この破綻と共に、官僚に依拠せざるを得なくなり、たちまち「官僚主導政治」に戻ってしまったのだ。
野田財務相の大連立構想こそが、この堕落した民主党政治の集大成である。これは、2年前の「政権交代」を自ら否定し、選挙民を欺く、とんでもない策謀だ。

だが、よく見ると、野田氏のシナリオには一貫性がある。大連立を消費増税とセットで主張していることだ。ここに策謀の「発信源」を見てとることができる。
つまり発信源は、財務省である。財務省はいまや同省のかいらいと化した財務大臣を民主党代表に就かせ、自民、公明両党と組ませて安定政権にした上で消費税を引き上げさせ、意のままに操ろうという魂胆なのである。
この「野田政権」を担ぎ、大連立に熱心な面々が、政権黒幕の仙谷由人内閣官房副長官、枝野幸男内閣官房長官ら政権執行部であることは、不思議でない。 彼らはすでに「財務省依存症」であり、もはや民主党単独では能力的に政治課題に対応できないと自覚している。 が、さりとて権力を手放すつもりはなく、マニフェストを叩き売ってでも自民、公明と組んで政権の延命を図ろうとしているのである。

代表戦の判断基準

民主党政権がこうまで粉々に瓦解してしまった理由は、党内がバラバラなまま「政治主導」への実務能力がからきし欠けていたためだ。 官僚組織に頼らずに自前の判断で政策を企画立案するためには、経済産業省の古賀茂明・大臣官房付のような改革派官僚や民間の改革派有識者をスタッフとして活用しなければならない。 しかし、そうしなかったために、政権は日々の対応に追われて終始、後手後手に回り、結局は旧来の官僚組織の言いなりになってしまったのである。自ら判断を下して自己決定する能力と、政策目標実現に向けた優先順位付け、方法論がまるで欠落していた。
このことが、政権の決定的な欠陥となったのである。
マニフェスト実現や問題の解決に向けた「手順」を見出せないまま、右往左往して「政治主導」の掛け声ばかりが躍った民主党政府の2年間であった。

民主党政権のリーダーたちの特色は、ドーンと花火を一発打ち上げるが、あとが湿って続かない、というものだ。
「最低でも県外」と宣言したが、自民党案に逆戻りした普天間基地問題、「公務執行妨害で船長逮捕」と意気込んだが、釈放した中国漁船の巡視船衝突事件、「脱原発」をぶち上げたが、エネルギー危機対応を示せずに「私的見解」に後退 ― 首相らのすべての約束事や公式発言はたちまちホゴにされ、国民の信頼は地に堕ちた。

こうした失態続きのあと、当初は次期総理の本命と目された野田財務相が打ち出したのが、裏切りの「大連立」だったのである。 したがって、かつて「政権交代」を望み、民主党に期待した国民側から見れば、今回の民主党代表選の判断基準は大きく「大連立に賛成か反対か」となる。 これを言い換えれば、「野田氏以外」から代表が選ばれることが、民主党が国民の支持を辛うじてつなぎ止める最低条件となることを意味する。