■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
<緊急速報4> 危険情報を即刻開示し、対応を急げ

(2011年3月28日AM10:00)

政府は福島原発の切迫した危険情報をただちに開示しなければならない。
福島第一原発3号機で24日、水に浸かってケーブル敷設作業をしていた作業員3人が被曝した。 経済産業省原子力安全・保安院は25日、放射能入りの水が被曝現場のタービン建屋に隣接する原子炉から漏れた疑いから、原子炉内の核燃料が高温で損傷し、放射性物質を出している可能性を明らかにした。

これは極度に危機的な状況だ。3号機の核燃料を密封している格納容器が損傷しているとすれば、猛毒の放射能プルトニウムの放出が続く危険があるからだ。 しかし、放出された放射性物質のうちプルトニウムについては、政府・東電は本稿執筆時点で測定値を公表していない。
3号機は他の1,2,4,5,6号機と異なり、高出力・高放射能のMOX(Mixed Oxide)燃料を使っている。 MOX燃料とは、核分裂しやすいウラン235と、使用済み燃料から取り出したプルトニウムを使った混合酸化物燃料のことだ。 「プルサマール発電」と呼ばれ、海外では仏独を中心に50以上の原発で使われているが、日本では3号機を含め全国の4基の原発で使われている(ほかの3つは九州電力玄海原発、四国電力伊方原発、関西電力高浜原発)。

プルトニウムは「毒物中最悪」とも言われ、アルファ線を放出するため体内に蓄積されると強い発がん性がある。しかも体内に吸収されると排出されにくいのも特徴だ。 半減期はプルトニウム239の場合、2万4000年余に及ぶ。生物学的半減期は骨と肝臓に吸収されると、それぞれ20年、50年に達する、とされる。 チェルノブイリ事故では、大量のプルトニウム放出を引き起こした。

しかし、政府は3号機がきわめて危険なMOX燃料をつかっている情報を国民に知らせていない。 消防隊や自衛隊などが異常なくらい3号機に放水を続けているのも、東電と当局はその危険性を熟知しているからだろう。 3号機は3月14日に水素爆発で建屋が損壊したのに続き、21日には灰色の煙、23日には黒煙が上がり、重大な異変が続いている。 他方、政府はIAEA(国際原子力機関)には伝えていた放射能拡散予測のシミュレーションを日本国民に公表したのは3月23日になってからだ。 これは「SPEEDI」と呼ばれるシステムで試算したもので、それによると原発から放射性ヨウ素が拡散した場合、30キロ圏外でも12日間で100ミリシーベルトを上回る甲状腺の内部被曝を起こす可能性がある。

しかし、政府は原発から半径20キロ圏内の住民に避難、20キロから30キロ圏内の住民に屋内退避を指示し、25日になって屋内退避者に対し30キロ圏外に「自主避難」を促した。 相変わらず極力、危険を住民、国民に知らせず、避難を明確に指示せず、理由について説明しない姿勢なのだ。
27日には3号機、1号機に続き2号機のタービン建屋でも水たまりから通常の原子炉の冷却水に比べ、超高濃度の放射性物質が検出された。 1〜3号機のすべてで、原子炉中の燃料が損傷していることが確実となった。

政府は進行する危機に際し、危険情報をすべて国民に即刻、知らせる義務がある。