■Online Journal NAGURICOM 沢栄の「さらばニッポン官僚社会」 |
第3章 官僚たちの利権追求の道具・公益法人(新続編)
前回みたように、JAFは「F1」をベースに利権を広げてきたが、この路線の延長線上でF1、ル・マン24時間レース、パリ・ダカールラリーなど、世界で活躍する日本選手に国際ライセンスを発給したり、日本製競技車両のFIA公認申請手続きを行ったりもしてきた。JAF加盟のモータースポーツクラブもつくられている。東京だけで100以上、神奈川県で50以上に上る。
法人税も払わず独占興行を行なう不思議
つまりは競技に参加するための認定や資格付与をJAFは幅広く考え出し、独占的に手掛けているわけ。当然、認定や資格を得るためには料金を支払わなければならず、嫌なら参加をあきらめなければならない。問題は、こうした独占的業務を公益法人が行い、法人税などの課税を免れていることだ。競技に参加したい者の願望につけ込んで、資格付与や認定事業を行い、FIAとつるんで新規参入を阻んでいることだ。
JAF発給の国内競技運転者許可証A(いわゆるAライセンス)を取得する希望者に対して開催する「Aライセンス講習会」の認定を例に挙げてみよう。JAFは手続きとして、開設予定日の二カ月前までに所定の書式を持ってJAF事務局に申請し、同時に講習内容および時間割の提出を義務付けている。開設申請料は1件につき6,620円。講義内容は、国内競技規則と競技車両規則にそれぞれ30分以上、レーシング講義に30分以上、などとなっている。実技試験は基礎実技、走行実技とも60分以上。JAFはAライセンスを発給するだけでなく、取得希望者に対する講習会の認定も行うなど、さまざまに収入を得ているわけである。
JAFが書式を作っている競技運転者許可証と公認審判員許可証の交付申請書には、一つのトリックがある。申請者の氏名、生年月日の次にJAFの年会費の有効期間の記入欄があり、入会していることが資格取得の前提なのだという無言の圧力を掛けている。
このようにJAFは資格付与と認定を武器に日本のモータースポーツをFIAの翼下に引き寄せ、FIAのカラー一色に染めてしまったのである。JAFが米国の自動車競技に排斥的になったのも、自然な流れである、だが、内情を何も知らされていない会員や自動車競技関係者、ファンは、JAFにミスリードされ、F1を頂点とするヨーロッパ系の競技が国際競技のすべて、と長い間勘違いしていたのではないか。
米国CART(旧インディカー)レースの日本初の公式戦は、ツインリンクもてぎ(栃木県)で昨年3月ようやく開催された。CARTにはホンダ、トヨタがベンツなどと共に参戦している。世界最大の自動車生産を誇る米国勢が参加しないF1レースは、到底「世界的」といえないのではないか。
FIAとの黒い噂を払拭すべきだ
もう一つ、物騒な情報がある。JAFは一説によれば、年に1千万円ほどの上納金をFIAに支払っているらしい、というものだ。F1レースの開催には1レースにつき10億円から20億円の裏金が要求される、との噂も聞いた。 疑いを晴らすためにも、JAFはモータースポーツ事業の収支の詳細を公開すべきである。あの手この手を使ったモータースポーツからのJAFの97年度の収入は約6億7千万円に上ったが、その多くがFIAに吸い上げられた可能性もある。
なぜJAFは公益法人にもかかわらず、興行的なモータースポーツ事業を推進するのか。答えの一つは、JAFの前身だったJAA(JAFはこれを吸収合併する形で63年に発足)が既に55年にFIAに加盟していたことだ(FIA自体は第二次大戦終結後間もない50年に設立された)。JAFはいわば、誕生と同時にFIAと結びついたモータースポーツ事業を背負わされたのである。
この出生の不幸は、いまになって現れてきた。モータースポーツ事業を母体(JAF)から分離独立させて民営化するか、もしくは母体ごとそっくり株式会社に衣替えしてしまうか、―実態からみて、経営形態は根本的に変わらなければなるまい。
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