NAGURICOM [殴り込む]/北沢栄
■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
第2章 官僚たちの利権追求の道具・公益法人(前編)
 いま、公益法人が問題だ。官僚たちはかつては「特殊法人」(法律によって、設立された法人)を使って自分たちの権益と天下り先を広げたが、いまでは公益法人(財団法人および社団法人)を舞台に、自らの自己増殖衝動を満たしている。特殊法人の不祥事が明るみに出るにつれ、世間の批判をかわすため、特殊法人をつくるのはやめ、自分たちの裁量で簡単にできる公益法人を権益拡大の「手足」に使うようになったのである。現在、公益法人は全国で2万6千以上に上る。その多くは業者と結託しつつ官僚が主導してつくったものだ。
 公益法人は、民法34条に基づいて「公益に関する事業を行い」「営利を目的とせず」「主務官庁の許可を得る」という三要件が満たされれば、役所が設立を許可する。「公益」といっても定義があいまいだから、公益法人はいとも簡単に設立できるわけだ。

典型例は日本自動車連盟(JAF)

 公益法人問題がよくわかる典型例は、社団法人・日本自動車連盟(JAF)のケース。JAFは一年余り前までロードサービス事業を独占してきた。

 JAF問題は、大きくとらえて三つある。
 ・株式会社なら課税対象となる莫大な利益に対し税金を払っていない、・六十人近い役員の大半を自動車関連業界人が占め、トップの会長は自動車販売会社出身、副会長二人のうち一人が警察庁OB、専務理事(一人)が運輸省OBなど、業界関係者と所轄官庁の天下りOBが事実上運営している、・事業収入の約九割を占める年会費・入会金を納める特定会員を対象に事業を行っており、公益法人に課されている「不特定多数の者の利益の実現」という目的から外れる。

 さらに、国会で追及され、世論の批判を浴びて軌道修正を余儀なくされた昨春まで、JAFには次のような事業上の問題点が四つあった。・道路上の故障車の修理・牽引業務は町の修理工場やレッカー業者、自動車販売店のアフターサービス業務と競合し、民業圧迫につながる、・警察庁はJAFの作業車に対し公益事業だとして「緊急自動車」の指定を行い、赤色灯を点滅させて高速道路上の作業を有利に行えるようにしている(競争業者は同じ作業をしても指定を与えられない)、・JAFのモータースポーツ事業はリスクの大きい興行に近いうえ、ロードサービスを受けるために入会した会費収入から、事業の赤字を穴埋めしている、・JAFの子会社三社(通信販売・印刷・保険代理業・広告など)は、ロードサービスを受けることを目的に入会した会員の個人情報を通販などに流用している(しかも、三社の役員は95年度までほぼ全員をJAF役員が兼任していた)。

 国会での問題追及をきっかけに、規制緩和策が実施され、昨年四月に「ロードサービス事業の自由化」が実現する。この前後からJAFは運営方法を見直し、“問題隠し”の化粧をほどこすが、基本の体質は変わっていない。(次回につづく)


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