NAGURICOM [殴り込む]/北沢栄
■Online Journal NAGURICOM
沢栄の「さらばニッポン官僚社会」
はじめに 「官僚主導システム」の破綻
 いつまでも低迷する日本経済、さっぱり良くならない暮らし向き、押し寄せる将来への不安―われらのニッポンはどうしてこんな体たらくになったのか。この世紀末的崩壊は、国、地方自治体、企業、学校、家庭と全領域に広がっているゆえに、その根本原因はこの国特有の「官僚主導システム」の破綻にある、と私は考える。
 「由(よ)らしむべし、知らしむべからず」としてきた官の官尊民卑の思想は、責任をあいまいにしたまま不良債権隠し・処理の先送りを促し、事態を一層こじらせて金融システムを機能不全に追いやった。

 バブルが崩壊した92年から今年度補正予算までに総額82兆円に及ぶ景気対策を打ちながら、一向に効果を上げなかったばかりか、財政赤字をGDP規模にまで悪化させた。小渕政権が打ち出した金融破綻対策への公的資金の投入、7兆円規模の減税策も、構造改革を先送りして従来パターンを繰り返す限り、金融と景気の本格回復は望めず、財政をますます悪化させる。事ここに至っても確たる改革ができないわけは、改革を嫌う官僚によって政治が牛耳られているからである。

法律にない奇妙な慣行

 一つの例を挙げる。閣議決定は全員一致を原則とするが、その閣議にかける案件はすべてこれまた中央官庁の事務次官による事前の全員一致が必要、とされている。法律にないこの慣行によって、閣議にそもそもかけられる案件が官僚トップの全員一致の合意を前提にしているわけだ。これでは少数者が出す根本的な改革案など通りっこないし、こうした慣行を放置してきた役所任せの「政治」にも改革が期待できるわけがない。
 この国の官僚主導システムは、このように国民が担い手を選んでいるはずの「政治」さえ骨抜きにし、戦後続いた規制・保護政策を通じて「産業」を支配し、規制と予算で「教育」を画一化し、ことごとく荒廃させた。だが、冷戦構造が崩壊したあと、金融をはじめとする競争自由化とグローバル化の嵐が、戦時に形成された日本型秩序「官僚主導システム」をついに粉砕してしまったのだ。

 問題は、このあとの「民」が主体となる来るべき社会がまだ確立途上にあり、視界ゼロを続けていることだ。その理由は、打撃を受けながらも旧秩序がまだ勢力を温存させているからである。旧勢力は元の体制を建て直そうとするから、将来のトータルヴィジョンは体制側からは現れず、この肝心の部分に「ブラックホール」が広がって、先が見えないのである。
 このコラムでは、二つのことを取り上げたい。一つは、この国の官僚が「政府」の名の下に利権を追い、自己増殖してゆく実態をお伝えする。二つめは、刻々と変わる経済と金融、そして国の実態である。原稿の素材には会員誌のようなミニコミに報じたものも一部含まれているが、現時点で再編集し、オリジナルな装いでお届けしたい。  第一回は、隠されてきた不良債権のもう一つの実態をお伝えする。
★情報をお寄せください
バブル崩壊ととともに始まった金融不安、その渦中で次々に明るみに出る官僚の腐敗、大蔵省の失墜――参院選における自民惨敗など、さしもの強固な官僚機構も音を立てて崩れ落ちていくようですが、これでほんとうにニッポンは変わりうるのか。現場で日々の活動に取り組んでいる実務家から生の情報をお寄せいただければ幸いです。



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