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北沢栄
『官僚利権
国民には知らされない霞が関の裏帳簿

実業之日本社■本体1000円+税

本書の内容はこちら

『官僚利権』の反響の一部を紹介します

  • 月刊リベラルタイム(2010年9月号)
    一般会計の5倍の規模を持つといわれる特別会計。複雑で不透明な特会の仕組みを、平易に説明するとともに、官僚の利権の構図を明らかにした。
    昨年の民主党政権下の「事業仕分け」によって、天下りは禁止され、独立行政法人の「ムダ廃止」が実行されたかのように見えた。だが、実際には天下りは温存され、「仕分け」された事業も、姿形を変えて、霞が関に温存されている。 一方で、天下り先となっている独立行政法人に対する政府の出資は、2005年までの20年間で2640億円が回収不能になっている。
    著者の試算では、「埋蔵金」は兆単位で存在する。消費税増税論議の前に、必読の1冊だ。

  • 週刊新社会(2010年7月27日付)
    特別会計の“闇”を暴く

    このところ大メディアでも、「これだけ事業仕分けをやっても無駄があまり出ないのだから、いわれているような官僚の無駄遣いはないのではないか。消費税増税の論議を本格的に進めるべきだ」という論調が目につく。こうした議論に真っ向から冷や水を浴びせたのが本著である。
    国の予算は、一般会計と特別会計からなる。09年度一般会計は88.5兆円だが、特別会計は一般会計との重複部分も含めると354.9兆円にものぼる。(中略) この特別会計は、各省庁が管轄する5000近くの特殊法人をはじめ、独立行政法人、公益法人などに補助金、補給金、委託費、出資金などで年間12兆円支出されている。 ところが、国会で審議されることもなく、チェックも甘いから、天下りや渡りの温床になっている問題は、これまでもたびたび指摘された。(中略)
    事業仕分けは脚光を浴びたが、全体から見るとまだ20%程度だ。予算には事業系のほかに、さらに制度系もあり、これははるかに大きい金額になるが、こちらは全く手が付けられていない。 著者は一般会計と特別会計の情報をオープンにし、究極の会計として「一般会計と特別会計を統合するしかない」とも指摘している。(評者はジャーナリスト・栗原猛氏)

  • Kyodo-Weekly(2010年6月28日号)
    著者は、国会で参考人として意見陳述の経験も持つ、「独立行政法人、特別会計、天下り」問題のエキスパート。国民が納めた税金や年金保険料などを特別会計を通じ、官僚の天下り先に補助金や委託費として支出している「霞が関の裏帳簿」の実態を暴いた力作だ。
    一般会計とは別に設けられる特別会計の規模は、一般会計と比べ、実質(純計ベース)約5倍。省庁はこの巨額の金を国会に諮ることなく、特別会計から、天下り先の独法や系列の公益法人へ事業資金として流し込まれ、契約も競争方式が少ないなどと、その無駄ぶりを指摘する。
    民主党は昨年の衆院選マニフェスト(政権公約)で「特別会計、独立行政法人、公益法人をゼロベースで見直す」とし、独法や公益法人の事業見直しに着手はしたが、特別会計内の“埋蔵金”の発掘は棚上げの状態。著者は、埋蔵金活用の強い意志が欠けていると民主党を叱咤激励する。
    特別会計の在り方を見直すことは、行財政改革に直結。一般会計と特別会計を合わせた予算の総組み替えの基本方針を示し、予算の膨張を防ぐための「新シーリング」設定や、最終的な特別会計制度の廃止などを提起する。 菅直人首相は消費税の引き上げに積極姿勢を示したが、民主党は、初心に戻り、自民党が示した「消費税率10%」ではなく、この著作の方を参考にしてはいかがだろう。

  • 月刊ベルダ(2010年7月号)
    「官僚利権」の資金源「特別会計」が丸裸に

    「税金の無駄遣いを徹底的に洗い出す」「特別会計(特会)に正面から取り組みたい」と意気込みを語った蓮舫・新行政刷新相。いままでの事業仕分けで手付かずだった特会にメスを入れるという。その言や良し。 実際、最も期待された財源捻出ではまるで効果がなかったのだから。特会は一般会計の予算(10年度92兆円)の実に4倍(約381兆円)という「超肥満体」体質にある。ダイエットをしてもらおうというわけだ。本書の狙いもそこにある。
    特会は一般会計とは別に設けられた、各省庁が特定の事業を行うために区分経理している会計のこと。原資は私たち国民の税金や保険料だ。だが、その使い道のチェック機能が働いていない。所管する府省庁が国会のチェックを受けないのをいいことに、好き勝手に使い余剰金を貯め込んできた。本書の副題にあるように、まさに「国民には知らされない裏帳簿」なのだ。
    この巨額特会資金は、各府省庁が作った事業別に、補助金・補給金・委託費・出資金などの形で、独立行政法人・特殊法人・公益法人(財団法人と社団法人)・特別民間法人など天下り先に流れ込んでいる。

    著者は言う。《特会は族議員から成る「政」と結ぶ「官」のサイフとして、あらゆる官製事業に資金を供給してきた》。
    その典型例が本章の冒頭で取り上げられている、JAL破綻で注目を集めた空港整備の特会(社会資本整備事業特会空港整備勘定)だ。仕組みはこうだ。航空会社が支払う空港使用料や着陸料などを主な財源にする同特会はじゃぶじゃぶカネが入るため、出口である空港建設を、たとえ採算に合わないと予測されていてもつくらざるを得なかった。 特会→空港乱造の悪循環だ。そして「政」が空港建設で業者に利益を誘導し、JALに赤字航空路線を飛ばさせ、「官」はその関連団体にぞろぞろ天下っているという構図ができあがる。
    本書では、読者(国民)の開いた口がふさがらないというくらい、同じような事例をこれでもかというほど載せている。
    本書の最後で、著者は官がひた隠す「霞が関埋蔵金」を徹底的に掘り起こす。特会にはフローで39兆円、ストックで47兆円の埋蔵金が眠っていると説く。多くの図表が使われ読みやすい。時宜を得た好著だ。

  • 週刊エコノミスト(2010年6月8日号)
    官僚による無駄遣いを追及してきた著者の、昨春の『亡国予算 闇に消えた「特別会計」』に続く特別会計糾弾シリーズ第2弾。前著上梓後に民主党政権が誕生し、事業仕分けで無駄遣いにメスを入れたが、著者の評価は全く不十分というもの。今後の仕分けへの期待を込め、問題点の詳細や、天下り先法人へのカネの流れなどを、前著以上に踏み込んで解き明かした。

  • 藤原豊司氏(拓殖大学客員教授)
    「亡国予算」の著者がまたまた快著をものして見せた。財務省以下の霞が関官庁が、さまざまな“埋蔵金”を作り出して乱用し、私腹を肥やすばかりか、組織的な“天下り”体制を作り出して、定年後の身分保障まで確立している実態をこれほど如実に示されると、腹立たしいのを通り越してあきれ果てるほかはない。
    予算は毎年、精密に組み上げるが、決算はないがしろにして国民の目に触れさせなくする仕組みは詐欺としか言いようがない。財務省以下の諸官庁は、いずれも埋蔵金からの自省の取り分を最大限にすることにしか関心のないゴロツキ集団に見えてくる。埋蔵金を含む特別会計が、査定の厳しい一般会計の5,6倍にも達しているとの指摘も各省庁の利権集団化を裏付けているといえるであろう。年々予算が肥大化し、国家財政が破たんにひんしても、中央官庁のエリート集団には痛くもかゆくもないらしい。予算は入念に組み上げるが、決算はおざなりにし放題という指摘も、こうした“お家(所属省庁)第一”のエゴイズムをむき出しにしていると言える。
    会計検査院は時折、こうした諸官庁の無軌道ぶりを指摘、是正させるようだが、検査院自体、財務省に予算を握られている以上、本格的な査定は出来ていないようだ。国会さえ、複雑かつ膨大な会計報告書を精査出来ないというのだから、予算も決算もすべて官僚たちの胸三寸で決まってしまうことになる。納税者は一体誰を信用したらいいのだろうか。
    著者は「まえがき」で、鳩山政権が始めた画期的な省庁任務の「仕分け作業」に当たる「仕分け人」に指名されたのに、あとから財務省とみられる筋からの圧力で、「ジャーナリスト」であることを理由に取り消されたとの興味深いエピソードを伝えている。ジャーナリストはおろか、大学教授さえ、議会証言では政府寄りの発言をするというから、取り消しの真の理由は「亡国予算」など、政府、官庁に耳の痛い証言をされるのを防ぐのが目的であったろう、と容易に想像できる。これでは日本が民主主義国家であるなどと、どうして言えるのだろうか。
    予算編成と決算はもとより最も重要な国事行為であり、膨大な作業であると同時に一般市民にとっては難解である。著者はこの難解な文書を見事に読み砕き、ありのままの姿を伝えてくれた。官僚に対する苦言がやや多すぎる点は気に掛かるが、指摘はそれぞれ適正であり、まさにジャーナリストの本領を遺憾なく発揮したといえる。評者は読み始めるとたちまち引き込まれ、読み終わるまで置くことができなかった。見事な解説書といえる。予算が重要なことは分かっていても、通常はメディアの報道以上のことを知ろうとも思わない。それを魔術のように、下にも置かせなかった著者の力量には頭が下がるとしか言いようがない。実業之日本社は大いに宣伝し、一人でも多くの市民が国家予算に関心を寄せる啓蒙の書としてもらいたい。(版元の実業之日本社宛に発信)

  • 国民には知らされない霞が関の裏帳簿(読者・奥平一富氏 著者あて書簡より)

    1. 前著に引き続き本書は霞が関の裏帳簿(特別会計)の解体新書ともいえる。
      かかる解剖学的分析と視点で闇はかなりはっきりと解明されてきたが、全体像の複相的関係を見渡す鳥瞰図を作成するためには、特別会計が余りにも複雑なシステムのもとに怪奇な性格をもっているゆえ、特別会計間の相互依存etc.全貌を表現しきれない点もある。

      即ち特別会計の実態を抽出するためには、そのフローの性格とストックの性格が複雑に混じり合った会計、重複した相関図、資金使途の妥当性、資産、負債分析等余りにも垣根が多く、今後一段と解明される必要があると思われる。
      想像するに、専門の財務官僚も正確無比に把握している人はいないのではなかろうか。それゆえいわゆる埋蔵金を内蔵する特別会計は、アンタッチャブルな裏帳簿として存続しえたゆえんでもあると思われる。

    2. 埋蔵金の推計
      特別会計のフロー(可処分剰余金)とストック(可処分積立金)から大枠を推計するのは炯眼であるが、数値としては両方ともストック的性格をもつのではないかと思われる。
      歳計剰余金は、翌年度への繰り入れ34兆円が含まれるが、その資金フローの性格は前年度からのほぼ同額に近い繰り越しがベースになっているので、両建計上の積立金的性格が強いのでなかろうか。
      前年度の繰り越し+(今年度歳入−歳出)=剰余金43兆円(うち翌年度繰入34兆円)

      但しこの過剰な財源等の中身が厚すぎることは変わらない。財投特会と外為特会の積立金の合計が埋蔵金の性格が強いとみるのも妥当で、現に財投特会は一般会計に供出しているのでその正当性が裏づけられたともいえる。
      外為特会は過去資金繰りに困って取り崩されたことがないので、埋蔵金的性格の積立金の性格をもつが、変動リスクヘッジの性格から意義(必要性)を主張する論者もあろう。
      但しこの性格は本書の主張する日銀とのタイアップが必要になる分野かもしれないが、日銀の独立性との問題で議論を呼ぶことになるのではないかと思われる。

    3. 特別会計の勘定の性格として埋蔵金が多くため込まれているのではないかと見込まれる分野、即ち事業仕分けの対象となりやすいものとして、特別会計の貸付金と不用額(経費の過大計上や未使用金額)、独法や公益法人の諸勘定(使い残し金、余剰金、政府出資金、資産超過の実態、補助金)に埋蔵金的性格の資金が多く含まれているとの指摘は、さすがこの分野の第一級の専門家として切れ味がするどい。
      本書がマスコミ等の関心とは別に、しかるべき分野に陰に陽に本書の圧力・影響が及ぶことは否定しえないところと思われる。

    4. 本書を読んで誰からも否定しえない埋蔵金の性格は、不用(使い残し)、不急、重複、時代遅れ、非効率、赤字垂れ流し等の負の性格なのに慣習的に続けられている予算のことで、掘り起こした埋蔵金は国民の見える形で使うことである。
      即ち特別会計の埋蔵金を一般会計に戻し、一般会計の赤字体質を脱却させる(新規国債調達にほぼ見合う特別会計への繰入れという変則かつ奇形なシステムとなっている)ことが、残された国の破綻の道に突入しないですむ数少ない方策といえる。

      但し、埋蔵金的性格の強い勘定とはいえ、何らかの有形、無形な形で運用されていることも考えられるので、キャッシュベースで取り組んでいくためには、段取り的な時間が必要となろう。かかる埋蔵金等の問題と公的セクターの本来的役割の重要性は切り離してみる必要があると思われる。

    5. 更に低成長率のもとでの消費税の引き上げは、日本経済に与える影響は大きく、単に財政負担だけの観点からだけでは決断しにくい面も多い。
      更に円高下の金利等の状態は本来不自然な状態で、海外(外資系etc.)から演出された色彩も強く、金利高になったら国債問題は大問題になってこよう。
      現在は低金利下の国債の国内安定消化状態にあるが、かかる埋蔵金問題、特別会計の問題について政府は日本の綱渡り的状況を踏まえて決断していく必要がある。
      日本は路線を決断すべき最後の局面に入っているのかもしれない。

    6. わが国の資金フローは家計部門の貯蓄超過が大幅に解消されてきており、非金融法人部門の貯蓄超過状態へ転じている。代わって公的部門の投資超過状態が大きなもの(国債依存度の増大)となっている。
      従って、わが国は有効需要の対策からも公的セクターの位置づけが重要になってきている。かかる公的セクターの資金調達(国債依存度)の面から綱渡りの状態におかれており、特別会計の問題はかかる延長線上の問題とみてとれる。

      即ち特別会計のリザーブ資金としての資金繰り的な金庫の側面も、否定しえない性格(財務省が手放さない理由)であるが、それを主張するなら特別会計をシンプルに正直に国民の目にさらしてから予備経常的経費項目を決めてからにすべきで、本書の視点でもある資金繰り資金の性格は日銀とのタイアップ体制を考えるべき―但し日銀の独立性の問題は残る―で、裏帳簿としての埋蔵金的資金繰り資金の性格は認められないであろう。

    7. 埋蔵金は、国会承認でしばられる基本的性格の強い一般会計と異なり、目的別、事業会計ベースで官僚主導の効く予算(国民の目に触れられない)―即ち霞が関の裏帳簿としての性格をもつゆえ、ゆるふん的資金繰り勘定が勘定間に蔓延し複雑怪奇な性格の会計が出来上がったものと思われる。天下り、渡り、随契等はその裏返しの行為ともいえる。更に日本の高度成長期には、郵貯の財投との関係の一対として、官僚の特別会計が両輪のように支えていた感がする。

      但しかかる勘定、会計の存続は、国債負担率が世界一という財投の危機的状態を招き、既に隠しきれない状態を招いてきている。
      家計の世界一の貯蓄金額(1400兆円)も、高齢化、少子化で成長率が期待しえず、家計貯蓄も頭打ちとなっているので、高金利による国債負担増、国内資金の外貨資産への流出、世界経済環境の変動も考えると安閑としていられない面もある。


  • ブログ「北鎌倉湧水ネットワーク」(2010年6月3日付)
    切れ味鋭く官僚による無駄遣いを追及してきた著者の特別会計糾弾シリーズ第2弾。著者は08年3月末現在の埋蔵金を、特別会計のフロー(可処分剰余金)でおよそ39.2兆円、ストック(可処分積立金)で47.4兆円の総額86.6兆円と試算。今後の仕分け(“発掘作業”)によって財源を確保し、次の活用ステップである「21世紀ニッポン」に進まなければならないと主張している。 (「北鎌倉湧水ネットワーク」代表・野口稔氏)

  • 詩人・朗唱家・字家 天童大人氏の公式ブログ(2010年6月10日付)
    蓮舫行政刷新担当相よ!07年11月から08年3月まで参議院行政監視委員会の要請を受け、独立法人問題に関する客員調査員だった北沢栄氏の新著『官僚利権』(実業之日本社、22年5月27日刊)を、熟読し、特別会計に大胆にメスを入れ、民主党の財源を確保せよ!どんどん埋蔵金を発掘できるぞよ!財務省に丸め込まれるなよ!!!

    是非、多くの国民の皆さんんに北沢栄氏の『官僚利権』(実業之日本社刊)を熟読して頂きたいものだぞよ!
    [特別会計]と、何ぞや!この本に触れるまで、全く分からなかったぞよ!
    もしかしたら蓮舫行政刷新大臣は、もう既にこの『官僚利権』を、御読みに為ったのではないかな!
    仕分け対象も財務省の言いなりに為らずに、原子力行政にも大胆にメスを入れ、民主党の財源を確保せよ!
    未だまだ手ぬるいぞよ! 国民からの内部告発を受け付けるホットラインを設置せよ!これは面白いぞよ!
    キャリア官僚の脳無したちが、保身に走るぞよ!!
    徳川時代には、[特別会計]などは無く、明治維新から、の深い因縁を抉りだせよ!!!
    しっかり無辜の国民の為に、蓮舫大臣は働きなさいよ!
    野党の首脳陣には、馬鹿者たちしか残って居ないぞよ!!!
    鳩山・小沢を辞めろ、辞めろとの大合唱をした御蔭で、民主党の支持率が回復したぞよ!
    アホな者たちの政党が遣る事は、政権が替わったと言う事が、未だに分からない議員が多いらしぞよ!
    新聞記者もテレビのキャスター・コメンテーターの意見も、意見に在らずよ!
    感想のだから、新聞が売れなくなるのも当然だろうに!
    ともかく[特別会計]に徹底的にメスを入れろよ!!!
    粗大ゴミのような官僚を追放せよ!


  • ブログ「飯嶋洋治のフリーライターの現場から」(2010年6月16日付)
    特別会計の使い道を監視し、真の財政再建への工程を示す力作

    菅直人首相が就任直後に「官僚こそが政策や課題を長年取り組んできたプロフェッショナルだ。官僚を排除して政治家だけでモノを考え決めればいいということでは全くない」と発言し、実質、官僚に歩み寄ったという見方もできる民主党政権。
    そんな中で『官僚利権』を読んだ。著者は共同通信ニューヨーク特派員、東北公益文科大学大学院特任教授などの経歴があるフリーランスジャーナリストの北沢栄氏だ。

    本書は特別会計の詳細な説明から切り込んでいく。特別会計とは一般会計とは別に設けられた会計で、外交、防衛、教育など国の基本的な経費と分けて、特別の必要から区分経理している会計だ。
    いびつなのはその構造。歳出・純計ベースで特別会計は一般会計の約5倍の規模を持つ。そして借金漬けの一般会計、多くの資産を持つ特別会計という逆転現象を起こしている。
    その特別会計の多くが、各省庁のポケットに入っている。自由に使えるサイフといえるだろう。そして、ここに「霞ヶ関埋蔵金」も含まれている。

    現在のシステムでは、すべての官僚がトップに上り詰められるわけではない。早期退職した官僚には、次の就職先=天下り先が用意されることになる。天下り先とは、独立行政法人であり、公益法人(財団、社団)であり、その傘下にあるファミリー企業であったりする。
    特別会計はこうした法人への「指定席」の見返りとしての持参金的な色合いもあるだろう。それら法人は一見独立しているようだったり、法的には民間に位置づけられていても官に依存している。さらに特別会計という自由に使えるサイフがあるために、こうした一連の法人は規律が緩みがちだ。そこにあるお金を無理やりに使ってしまおうとするか、巧妙(複雑?)なベールで覆い、お金を溜め込む。
    いわゆる「霞ヶ関埋蔵金」は伝説から現実のものとなり、実際に一部は表面に出てきたが、まだまだ使える金があると著者は言う。政府や学者が「一度使ったらそれっきり」というストックの考え方であるのに対し、著者はストックはもちろん、フローで使える埋蔵金がいままで言われているよりもかなりの多額に上ることを、詳細なデータとその分析により明らかにしている。
    そして、埋蔵金を十二分に活用することにより、年金や医療、介護保険など、不足する社会保障財源に活用し、官の息が掛かっていない民間企業に活力を与え、真の財政再建への工程を示している。

    以上は、本書のエッセンスのごく一部に過ぎないが、複雑怪奇な特別会計と、それをベースにした官僚利権を解き明かす力作と言える。 (評者はフリーライター・飯嶋洋治氏)

  • ブログ「じゃずはぐがんぐがんだぼととん」(2010年7月5〜30日付)
    北沢栄 『官僚利権』(実業之日本社)。一度は読んでおく本です。・・・官僚利権というタイトルではありますが、公務員の強欲、私利私欲の塊が、日本独特の特別会計だ、という本書。読んで感じることは、過去の経緯は別にして、必死にしがみついている公務員を剥がすのは無理でんな、という結論。・・・
    読み進むうちに怒る気もなくなるというか、そういう本です。・・・

    特別会計。なんか見ていると武家の社会と何の変わりもない。透明性はゼロ。高級官僚はかつての武士であり、違うのは表立って世襲ではないところだけ。予算の中身を見せない二重帳簿で国民から搾り取る構図。
    どうしてここまでひどくなったのか?ひょっとして?我々が若い頃に蔓延した社会主義・共産主義教の成れの果てではあるまいか?
    しかし悲観するには当らない。国が滅びるときは滅びる。自分たちが財産もって逃げようと、国がなくなれば流浪の民である。そのギリギリが国というものである。と、この本は書いているようだ。

    ・・・役人といわれた時代から鬱積したモノが突き動かしているのか、闇金融化してしまった。会計の明瞭化というのは、財務の基本だと思うが?やっぱり大蔵省という名前に戻したほうがよい。
    ま、増税は当分できなくなったし、頑張って赤字国債乱発してください。過去の歴史を見ても、事務屋のプロとして最後は逃げられないよ。戦中の官僚は事務屋のプロとして逃げ切ったと思っているのかな?

    ・・・狂乱バブルで“一気に日本でなくなった日本”が手に取るように見えました。素人目にも変革はほとんど破綻後、ということが分かります。それだって、たぶんダメでしょう。なぜ?悲しいかな官僚はモノが作れません。
    ・・・さてわれわれが意思を明らかにできるのは、次の衆議院議員選挙。官僚が含み笑いをしようと、やらねばなりません。その亡国の市民・官僚も投票するんですから、大変です。





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