『亡国予算』の衝撃波が広がっています。その反響の一部を紹介すると―
- 週刊現代(6月27日号)
「「霞が関埋蔵金」の隠し場所として、ここ数年来、にわかに存在が知られるようになった国の特別会計―。しかしその仕組みや利権構造については、いまだに闇に包まれたままである。「学者ら識者の多くは特別会計について、“解読困難”として『敬して遠ざかった』」からだ。実態を把握できなければ、監視するどころか、議論の余地を失うのは当然のことだろう。
「特別会計の予算規模は歳入ベースで一般会計の4.7倍余、歳出ベースで4.4倍余もある」。われわれの税金を管理する一般会計をはるかに凌ぐその巨大で複雑怪奇な特別会計に、ひとり挑み、全体像を明らかにしただけでなく、問題点をあぶり出し、改革のためのポイントまで列挙した。内容盛りだくさんの成果が本書である。
埋蔵金と小遣いと
特別会計の最大の特徴は、一般会計と違い財務省、国交省、厚労省など各省庁の“収入”をおもに管理している点だ。
たとえば、厚労省の所管する「労働保険特別会計」は、われわれが払う雇用保険の保険料を管理する。また、経済産業省が所管する「電源開発促進対策特別会計」は、「国民が毎月支払う電気料金に含まれる電源開発促進税」をプールしているといった具合。それら保険料や税をかすめとる形で蓄えられているのが埋蔵金なのだが、その総額は著者の試算では「50兆円規模」にもなるという。
問題は、埋蔵金だけではない。特別会計の仕組みがわかりにくいのをいいことに官僚たちは、ここから“小遣い”まで捻出し、使いたい放題使っている。国交省職員の年間タクシー代26億円のうち「同省所管の七つの特会から大半の約16億円が支出され」ているのはその典型例だろう。
これら特別会計に隠された埋蔵金や小遣いとして持ち出されている貴重な保険料や税などを、われわれのものとして取り戻すための提言には、説得力がある。しかしそれ以上に感心させられるのは、著者の驚くべき執念と根気だ。
それをボランティア精神の賜というには失礼かもしれない。だが、投資したエネルギーと時間に見合った収入を、度外視した仕事であったことはまず間違いないだろう(この予想が外れることは喜ばしいことなので、読者諸兄の知的衝動に大いに期待したい)。」(評者はジャーナリスト・岩瀬達哉氏)
- 週刊東洋経済(6月13日号)
「まず実態に驚き、次にこんな日本に誰がしたと憤慨し、誰もが「改めろ」と声を上げるだろう。塩川正十郎元財務相が国会答弁で「母屋でおかゆ、離れで子供がすき焼き」と認めた国の特別会計の問題である。
2009年度予算でも一般会計とは別に、4倍の規模の特別会計が存在する。それどころか08年度は一般会計の約59%に当たる約49兆円が特別会計に繰り入れられている。「一般会計は特会事業に資金を渡す『トンネル会計』」なのだ(第1章)。
この特別会計は「官製事業の『資金源』」で、天下りネットワークに使われ、赤字の垂れ流しなのに、情報開示も不徹底、国民のチェックも利かず、ツケだけが回ってくる。表題どおり「亡国予算」である。
官僚機構や財政の究明・分析で定評のある著者が、「『官』が自由自在に操る魑魅魍魎の世界」(第2章)を描き出した。歴史的経緯、官の横暴と政の無力という構造を明らかにした上で、都市再生機構などの独立行政法人や道路財源といった実名を挙げて、金額や手口を詳述する。諸外国の諸制度や改革のシナリオも提示している。
「離れ」の地下に隠されていた「埋蔵金」が掘り出され、いまや政府の新財源にもなっているが、実際は消費税16.8%分に当たる約42兆円もあり、「不用金10兆円強は毎年活用できる」というから、ほぼ無尽蔵ということになる(第4章)。
財政は破綻状態といわれ、消費税増税の議論が盛んだが、裏側にこんな事実が潜んでいれば本当に破綻寸前なのかと疑いたくなる。この本の読者は「離れのすき焼き」に徹底的にメスを入れれば増税は不要と思い始めるのではないか。少なくとも特別会計の抜本改革が進まないうちは消費税増税にゴーサインを送る気にはならないだろう。」(評者はノンフィクション作家・塩田潮氏)
- 熊本日日新聞(7月12日付)
「国家予算の構造は極めて複雑であり、全貌を把握するのは容易ではない。主要メディアの財務省担当記者は2年以上担当することが多いが、過去の経緯から霞が関の慣行まで十分にそしゃくしたうえで、かみくだいた予算報道をするには1年では短すぎるからだ。
しかし、多くの一線記者も日本の国家予算は80兆円強の規模で、歳入は約50兆円と理解しており、それ以外の特別会計に存在する膨大な資金についてはよく分かっていないのが実状だろう。
本書は、国民の目から隠れたまま巨大化してきた各省所管の特別会計の実態を綿密なデータに基づいて明らかにしており、特会を含めた08年度の日本の財政規模は、歳入で236.6兆円、歳出で212.6兆円に達する、という驚くべき事実を示している。特会の事態が分かりにくいのは、一般会計からの繰り入れや特会同士のやりとりなど複雑なフローで成り立っているためで、会計検査院ですら「資金の動きの全体が分かるものは示されていない」と認めている。
特会の余剰資金は「霞が関の埋蔵金」として09年度予算の財源でも注目されたが、筆者は、特会では毎年のように10兆円規模の不用額が出ているのに、一般会計に回されず、内部に留保されていると推計する。しかも、特会の多くは30年以上経過し、存在意義も薄くなっているにもかかわらず、改革があっても形を変えて存続するケースが少なくない。天下り先確保などに便利な「官のサイフ」を手放さない各省が特会を延命している、というのが筆者の結論だ。
日本の国と地方を会わせた長期債務残高は800兆円と先進国最悪になっており、国民心理に暗い影を投げかけているが、同時に将来の「消費税増税」の有力な根拠のひとつになっている。筆者は、米国型のオープンな財政制度への転換を呼び掛けているが、まず一般会計だけをみた財源不足論の危うさを再考する必要がありそうだ。」(評者は共同通信熊本支局長・岩瀬彰氏)
- 山形新聞(6月21日付)
「著者は、本誌文化欄「思考の現場から」でもおなじみのジャーナリスト。「公益法人―隠された官の聖域」「官僚社会主義 日本を食い物にする自己増殖システム」「静かな暴走 独立行政法人」などの著書がある。現代日本の官僚制が抱える諸問題やそれに対する官製「改革」の実情について、市民目線から丁寧に追いかけ記述してきた著者が、今回新たに挑んだ対象が「特別会計」である。
特別会計とは、外交や防衛、教育など国の基本的経費を賄う一般会計とは別に設けられ、特別の必要(例えば、道路・空港整備、年金管理、財政投融資など)によって区分経理されている会計のこと。現時点では21の特別会計が存在し、ガソリン税などの目的税、保険料などを財源に特定の事業を実施している。著者の試算では、その資金規模は一般会計八十数兆円の約5倍にあたる。ところが、その存在や実態はさほど国民に知られていない。
この無知にはいくつかの問題がある。第一に、一般会計の何倍にも及ぶ予算が、国会やメディア、世論による十分なチェックを経ずに運用されている点。第二に、特別会計を所管する府省がそれを自らの裁量で増量させ、資金不足の一般会計を傍目に、潤沢な資金を積立金として蓄積している点。第三に、それらを財源とした府省庁の天下り先培養(公益法人や独立行政法人)や採算無視の官製事業(例えば、「グリーンピア」「私のしごと館」)が横行している点。要は、「市民の財布」であるべき予算(の膨大な部分)が、「官の財布」として官僚たちに私物化されているということである。
限界をとうに超えた財政の逼迫から特別会計が注目を浴び、それが昨今の「霞が関埋蔵金」の議論につながっている。本書もまたそうした流れに棹さすものだ。だが本書には、一過性の関心にとどまらない、そもそも私たちは予算=「市民のサイフ」をどう考えるべきかという問いに関する骨太の哲学が存在する。来るべき私たちの「市民革命」のために、本書は、その啓蒙の書として読まれるべきであろう。」(評者は若年の居場所NPO「ぶらっとほーむ」共同代表・滝口克典氏)
- 日経ビジネス(7月27日号)
経営意識なき経営の罪
「本書の副題は「闇に消えた『特別会計』」。特別会計が生まれた経緯や仕組み、問題点をフリージャーナリストが追跡した。特別会計の使い残しである「霞が関埋蔵金」についてもかなりの紙幅を割いて解説している。
特別会計は、戊辰戦争の戦費を調達するために一般会計とは別に設けた「別途会計」が起源だという。ところが、有事目的の特別な予算は、第2次世界大戦を経て規模が膨らみ、支出項目が拡大して、「官僚の財布」に変容した。直接の出資金の形で、あるいは事業に対する補助金となって、官僚の天下り先である独立行政法人や公益法人(財団法人、社団法人)に流れ込んだ。
特別会計が実質的な財政の規模で一般会計の5倍強もありながら、数年前まではその中身が問題視されなかったのには理由がある。税金がどのような経路で特別会計に流れ込み、どう使われたかについての詳細を把握しづらい構造になっていたからだ。著者は、意図的に張り巡らしたとしか思えない特別会計のバリアに挑み、実態を明らかにしていく。
難解な仕組みを少しずつ解明していく本だから、読み切るには忍耐がいる。ただ、細かい数字を追い切れなくなったとしても、我慢してページをめくり続けると、多くの収穫があるだろう。例えば、いくつもの具体例に触れていくうちに、日本の財政が破綻に向かって突っ走っていることや、日本の財政がご破算で考えなければならない時期に来ていることなどを実感できる。
私自身は、独立行政法人や公益法人における経営マインドの欠如に強い危機感を抱いた。官僚も、自分が天下りをした法人では、理事長や理事として真面目に経営をしていたのだと思う。だが、官僚は経営者としてのトレーニングを受けていない。どんな経営をしても、運営の原資は補助金などの形で補給される。経営意識なき経営は最大の罪だが、当事者に悪意がない分、問題の根は深いと思う。
本書は特別会計の議論に風穴を開けた。今後、これに続けとばかり、特別会計を覆っていたベールを剥がす書籍や記事が次々と発表されるだろう。その局面では、誰もが分かりやすい形で特別会計の問題点が示されるはずだ。そして、日本の国家予算をゼロベースで考え直すための議論が始まるだろう。その時期が少しでも早く来るよう願っている。」(評者はワタミ会長・渡邉美樹氏)
- 週刊エコノミスト(2009年6月9日号)
「ジャーナリストで今や特殊法人、独立行政法人、特別会計研究のプロである著者が「特別会計『埋蔵金』から毎年10兆円は活用できる」と明かす怒りの書。副題「闇に消えた『特別会計』」の通り、国会の監視を逃れた場所で官僚がいかに無駄遣いをしているか、詳細にえぐっている。損失を出せば税金で補填するという滅茶苦茶なシステムの実態がよく分かる本だ。」
- 月刊ベルダ(2009年6月号)
「衆院で5月13日、過去に例をみない大規模の09年度補正予算案が可決された。財源の大半は国債だ。国の借金が対GDP比150%超と主要国の中で最悪の水準にある日本のバラマキ財政出動を、海外メディアは「カミカゼ支出」と揶揄、国家破綻へと向かう自殺行為と書き立てた。
だが、海外の目は国の一般会計に注がれているにすぎない。日本には官が握る、一般会計の5倍強の予算規模を持つ「特別会計」(以下、特会)がある。・・・
特別会計は、国が行う道路や空港の整備、年金管理財政投融資など特定の事業・事務を計理したり特定の資金を運用するために一般会計と別けて経理している会計だ。財源は、一般会計からの繰入金、特定財源(ガソリン税などの目的税など)、固有財源(保険料、手数料など)、借入金(国債発行など)の四つで賄っている。09年度時点で、21の特会がある。
だが、一筋縄でいかないのが特会だ。本書を読むと、複雑怪奇で不透明なカネの出入り・流れ、不明朗な予算の使途、情報開示のない特会から法人への出資などが次々とあぶり出される。 本書は、この隠された「闇会計」を具体的な特会を例示しながら丸裸にする。中でも、特会に眠る「霞が関埋蔵金」を、21の特会を検証しながら、こう弾き出す。《フローでおよそ42兆円、ストックで47兆円規模》と。そしてこう提案する。《50兆円規模の「国民経済・生活支援金」(仮称)を、3年程度の時限立法で創設》して、この未曾有の経済危機に活用すべきだ、と。今からでも遅くはない。」
- 週刊KyodoWeekly(2009年6月22日号)
特別会計の伏魔殿を解明
「・・・著者が指摘する特別会計の問題点は、まず情報封鎖である。一般会計については衆院と参院で2カ月以上、議論されるが特別会計はほとんど議論がない。31ある特別会計は、一般会計から組み入れたりその逆もあり、特別会計同士の融通や会計の勘定間での出入りもある。複雑かつ不透明だ。・・・
2番目は、各省庁の縦割りの中でそれぞれ管理・運営されているので、各省庁の既得権となっていることだ。 ・・・一般会計は財政法で規律が保たれているが、特別会計の場合は「異なる定め」ができることから、積立金や剰余金に共通のルールを作り、運用されたりする。・・・
概算要求基準(シーリング)もないから、チェックも甘い。さらに問題なのは、特別会計がつぎ込まれている特殊法人や独立行政法人は、天下りや渡り先の温床であるという点だ。・・・
著者は「究極の改革とは特別会計を廃止し、一般会計に統合することにある」と強調する。・・・」
- 月刊BOSS(2009年9月号)
「収入があるたびどんどん引かれていく税金。給与明細を見た時こんなに取られるものかと驚く人は多い。そんな税金の使い道は、国民の一大事で、これによって投票行動を決めてもいいくらいだ。しかし国の予算編成について知られる手段は限られている。テレビや新聞は、毎年12月末の一般会計予算(約80兆円)を報道するのが主で、埋蔵金とよばれる特別会計には触れない。本書はそんな特別会計の実態を暴露する。ムダに消えた税金の額、国民の目から隠された裏予算のカラクリ、消費税を上げなくてもいい理由など話題は多岐にわたる。著者は元共同通信、現在フリーのジャーナリスト。」
- 北鎌倉湧水ネットワーク(2009年5月22日付)
「・・・特別会計もそうなのだが一般人にとって予算そのものがとっつきにくい。本書は事例を挙げて分りやすく解説している。だからものすごくためになる。一例を挙げよう。09年1月からスタートした高速道路1000円で乗り放題の問題だ。施策実施に伴う民間高速道路会社の減収のツケは、最終的に特別会計、税金で穴埋めすることになるという。衆議院選挙も近付いてきた。どの政党の誰に投票するか。本書はそれを判断するのに有意義かつ実践的な「参考書」となるはずだ。
【高速道路の通行料1000円のからくり】
・・・具体的には、社会資本整備事業特会の道路整備勘定にある資金5000億円相当を独法の日本高速道路保有・債務返済機構に注ぎ込む。同機構がこれを財源に民間高速道路会社3社に対し、道路リース料5000億円を割り引いて、民間各社の負担をゼロにする―という筋書きだ。
なんのことはない。特定財源から得たガソリン税などの税金を、ETCを持つマイカー利用者にバラまくわけである。マイカー以外のトラック業者やETCを持たない利用者はこのバラまきの対象外となる。一部の利用者たちに偏った、実に不公平な“恩恵”となる。・・・」(評者は「北鎌倉湧水ネットワーク」野口稔氏)
- 飯嶋洋治のフリーライターの現場から(2009年5月10日付)
「「お上」意識というのは、政治や行政が想像を絶するほどにいいかげんという認識が広がるにつれて、薄まってきた。まだ「国がなんとかしてくれる」と考えている人がいれば、それは相当におめでたい人と言わなければならないだろう。・・・
「親方日の丸」というのは、官に依存していれば、とにかく安心という非常に卑屈な処世術を言い表した言葉だと思うが、今回、北沢栄氏の『亡国予算・闇に消えた「特別会計」』を読了して、私は180度視点を変えてみた。
それは、官にもともと経営感覚も能力もなく、民にパラサイトしているということだ。「親方日の丸」は幻想だったのだろう。そして、省庁には特別会計という、手元に潤沢に使えるお金があるだけ、始末に終えない。あえぎつつ地道に経営を続けている中小零細企業や、働いてお金を得ている(またはその意思のある)ネットカフェ難民の方がよほど真っ当に生きていると私は思う。
現在、「霞ヶ関埋蔵金」が注目されている。それは、特別会計の中に埋もれている。当初は否定していたが、その存在を与党も認めざるを得なくなっているのはご存知のとおり。ただ、その埋蔵金も、ストックのものであり、一旦使ったらそれでお仕舞いというのが一般的な評論家や識者の認識だ。
だが、著者は、「埋蔵金」は特別会計のフローでおよそ42兆円、ストックで47兆円規模と見ている。フローの中には毎年10兆円規模発生している「不用金」も含まれる、としている。つまり、フローの部分では、その年限りではなく、毎年10兆円がつかえるわけだ。
決して分かりやすいとはいえない特別会計の仕組みを丹念に明らかにしながら、著者は具体的事例をもって解いてみせる。
もちろん、現在の経済状況を考えれば、特別会計の「不用金」というのは、官から見たものであって、民かられば貴重な「必要金」であり、もともとは自分達のお金であることに違いは無い。
特別会計という官の財布を、民に取り返すことこそが、経済回復の唯一にして最後の手段ではないか? と同書を通読して感じたことだ。あるいは、一度、日本は経済的に焼け野原になった方が復興は早いのかもしれない。」(評者はフリーライター・飯嶋洋治氏)
- 民主党よこやま博幸(ブログ)(2009年5月3日付)
「・・・著者は、「埋蔵金」は特別会計のフローでおよそ42兆円、ストックで47兆円規模と見る。
なお、剰余金42兆円は、消費税16.8%に相当するとのことです。・・・
以上のような記述が真実とすれば、今までの政権与党は何をしていたのか。この間国民は生活苦にあえいでいるではないか。
私は、著者の「埋蔵金50兆円で、経済危機に対応する新基金を創設する」との意見に賛成です。」(評者は民主党愛媛県議会議員・よこやま博幸氏)
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