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<番外篇> 安倍政権進める原発維持路線/核廃棄物処理に問題
(2014年3月19日) (山形新聞「思考の現場から」3月18日付掲載)
福島第一原発事故から3年が経ったこの3月にも、安倍晋三政権は原発を「重要電源」とみなし、再稼働を進めることを明記した経済産業省の新たなエネルギー基本計画を閣議決定する。これは国民にとって不安をかき立てる「危険いっぱい」の決定となることは間違いない。
事故は原子炉の大爆発こそ辛うじて免れたものの、昨夏以来連日、汚染水処理に追われている。大量の処理水をためるタンクは増える一方だ。こうした中、先月にも人為的ミスでタンクから約100トンもの高濃度汚染水があふれる事故があった。30年から40年かかるとされる廃炉作業と並行して、汚染水処理をいつまで続けなければならないのか。
原発事故で現在なお約14万人の住民が避難を余儀なくされ、除染されて帰った被災地から再び転居する人も後を絶たない。「故郷喪失者」が続出し、被災地の人口流出が進む。
事故収束への道のりは険しい。安倍首相が2020年五輪の東京招致を勝ち取った言葉「事態はアンダーコントロール」とは裏腹の、恐ろしい現実が進行しているのだ。
仮にこのまま原発維持路線を進めたら、どんな困難が前途に待ち受けるか。
1つは、使用済み核燃料(核のゴミ)問題だ。日本国内で現在、約1万7000トンに上る高レベル放射性の使用済み核燃料が保管されている。これを超長期にわたり安全に貯蔵し、安全に管理し、安全に最終処分しなければならない。
2月の都知事選に「脱原発」を掲げ、立候補した細川護煕元首相を応援した小泉純一郎元首相が問題にしたのは、核のゴミの最終処分法が世界的にもまだ見つからず、手探り状態にあることだ。
有望視される安全な地層の地下深く埋める「地層処分」にしても、放射性廃棄物が無害になるまで10万年もかかる、とされる。気の遠くなるような話だ。これでは罪深くも現世代が発電に使った原発のゴミの処理という危険なツケを、末永く10万年後に至るまで後世に回すことになる。
福島第一原発では、目下、使用済み核燃料プールの燃料棒を回収する作業を慎重に進めている。プール水面下にある燃料棒を専用クレーンを使って作業員が1体ずつ抜き取り、専用輸送容器に収める際どい作業だ。1500体以上ある核燃料をすべて回収するには年末までかかる。こうした一連の貯蔵―管理―最終処分のプロセスにミスが生じれば、大災害を招きかねない。
最終処分場の選定作業が未だに進んでいないため、核のゴミはいま各原発で一時的に保管している。想定外の地震・津波などによる事故の危険と隣り合わせる。
2つめは、カネ食い虫で失敗だらけの核燃料サイクル問題だ。
核燃料サイクルとは、使用済み核燃料の燃え残りのウランやプルトニウムを取り出し、再び燃料に加工して燃やすサイクルを指す。青森県六ヶ所村にある再処理施設で試験運転中だ。
消費した以上に核燃料のプルトニウムを生み出すとされる高速増殖炉の実用化に向けた原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)。成果のないまま、ついに実用化を断念し、今後は別の目的に転用させるという。政権は、経済産業省の意向通りに失敗したもんじゅ事業を延命させるわけだ。
核燃料サイクル開発を推進した旧特殊法人の核燃料サイクル開発機構および同法人を05年に衣替えして設立された独立行政法人・日本原子力開発機構に「もんじゅ」などに向け莫大な国の研究開発予算が投じられてきた。
「もんじゅ」は、これまで1兆円超もの予算を費やしながら、トラブル続きから今なお運転停止の状態だ。にもかかわらず、毎年200億円規模の予算を維持管理費名目で主に人件費に使ってきた。財務省は11年11月の事業仕分けで費用の積算根拠が不明だとし、もんじゅプロジェクトに対し「説得力ある形で国民に説明する必要がある」と要求したが、実現していない。
政府は使用済み核燃料から取り出したプルトニウムをウランと混ぜ、MOX燃料として通常の原発で燃やす「プルサーマル」も推進する。プルサーマルは、九州電力の玄海3号などでスタートしたが、原発事故の影響で中断していた。プルトニウムは核分裂しやすく、危険度が高い。
安倍政権は12年12月の衆院選挙で自民党が掲げた「脱原発依存」の公約を反故にし、「原発維持」に切り替えた。だが、それは反省のない、安直に過ぎる決定ではなかったか。