| ■Online Journal NAGURICOM 沢栄の「白昼の死角」 |
第258章 消費減税の「財源」は見つかるか(中)/「日銀埋蔵金ETF」と「外為特会」がカギ
(2026年3月26日)
異次元のETF大量購入
財源5兆円捻出の道筋が見えてきた。
高市首相の公約「食品消費税ゼロを2年間実施」の成否がかかる減税財源。そのカギの1つが、日銀が保有する時価80数兆円に上るETF(上場投資信託)だ。これを年5兆円規模の減税財源に充てる案は、国民民主党が衆院選前に提案していた。
一方、400兆円を超える国の特別会計資金、このうち円安の進行で外貨価値が膨らんだ財務省の外国為替資金特別会計(外為特会)。その運用収益を財源に充てる案も現実的だ。中道改革連合や国民民主党が提案するほか、高市首相自身が1月、円安の効用に触れ「(外為特会は)今ホクホクの状態」と発言、特会の財源活用を匂わせた。
とはいえ国民会議の結論を見越して結局、「実現見送り」を予測する向きも少なくない。
だが、調査を進めるうちに、双方ともに財源化が大きく実現できる、と分かった。
アベノミクスに沿って金融緩和・景気刺激策の一環として、日銀が買い続けたETFの保有額は途方もなく膨れ上がった。簿価で37.2兆円、時価は株価高騰から80数兆円、株式配当に相当する分配金は年間2兆円規模。
まずはその処分に向け、巨額に至ったETF保有の経緯をざっと見てみよう。
黒田日銀総裁となり、「量的・質的金融緩和」を導入した2013年4月。日銀はETF保有残高を年間1兆円増やす(白川前総裁時は4500億円程度)と決定。さらに同年10月に年間買入額を3兆円に拡大、以後も段階的に増額し、買入額は20年にピークの7.1兆円に。
ETF購入は「異次元金融緩和」を象徴した。海外の先進国にはこの種の前例がない。香港の中央銀行(HKMA)がアジア通貨危機の1998年、香港の上場株式を大量購入して株価暴落の危機を救ったケースが唯一の例外だ。日銀は、政策金利をゼロからマイナスとし、これ以上利下げできない状況下、ETFを国債などと共に買い続けたのだ。
植田総裁となった2024年3月、日銀は金融政策を改め、ETFなどリスク性資産の新規買い入れ終了を発表。以後、異次元金融緩和の後始末(いわゆる出口戦略)を余儀なくされる。 黒田金融政策の間、国民はゼロ同然となった預金金利の不安や、円安進行に直面した。そして今、円安と物価高が収まらない中、減税財源へのETF活用が検討されるようになったわけだ。
買い溜めたETFを日銀自身は一体どう処分するつもりなのか―。日銀は3つの原則を決めた。1. 適正な対価で売る、2. 日銀の損失発生は極力回避、3. 市場への撹乱的影響を極力回避―の3原則だ。
売らない限り減らせず、大量に売れば株価を大きく下げる影響が必ず出る。この微妙な立場から日銀は年間売却ペースを3300億円(簿価)程度、市場に占める売却割合を0.05%程度に抑えた。 日銀はこの基本線に沿い26年1月からETFの売却を開始した。しかし、この売却ペースだと、全ETFを売り終えるまで100年以上かかる。
ETF活用の新型スキーム浮上
ETFを減税財源化を含め国民の最大利益に適う処分ができないか。
ETFの最適処分法について有識者らの提案は概ね3種に分かれた。1つは、「長期にわたる少額ずつの市場売却」だ。しかし、この方法では減税財源にまとめるまでに処分に時間がかかりすぎる。 2つめは、「公的機関への譲渡」。新設する政府系ファンドや既存の公的機関に譲渡して、ETF資金を年金財源や子育て、人材育成などにも活用する。 3つめが、「国民への譲渡」だ。ETFを国民に一律定額給付する。ETFを保有した国民は、一定期間売却できないようにする、との案も出た。
ここで大規模公的資金活用のノウハウを生かしたETF処分の新型スキームが、浮かび上がる。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)へのETFの有償譲渡だ。GPIFが年金積立金にETFを加えて300兆円を超える統合資産とし、減税財源への供出を含め積極運用する、というスキームだ。ただし資産運用に年金原資は一切使わない。既定の年金給付額は保障される。ETF譲渡を受け、年金基盤はむしろ強化される。
GPIFは、この統合資産を主に海外投資に活用して、GPIFのこれまでの好成績を超える運用収益を上げる―。
では、ETF購入に必要な財源は、どこから賄うか。GPIFが償還期限のない永久債を発行し、これと日銀の持つETFをスワップする。 公的機関が発行する永久債でETFの購入を賄うアイデアは、渋沢栄一の玄孫に当たる渋澤健・コモンズ投信会長による。
GPIFは、ETFの交換制度を利用し、ETFを運用会社に返して現物株式のバスケットを受け取ることができる。目を付けた特定株式の売却益や長期保有のメリットが得られるインセンティブとなる。
この新型スキームにより、減税財源と日銀のETF処分の2つの懸案が、併せて同時解決される可能性が高まる。
特別会計剰余金を財源化
特別会計も、一部で望外の埋蔵金に沸く。外国為替資金特会が、その典型例だ。歳出総額429.5兆円(2025年度当初予算)と一般会計の3倍強にも上る特別会計。予算の執行状況を精査すれば、多くのムダが見つかるのは間違いない。剰余金(歳入歳出の差額)、不用金(予算の使い残し)、積立金、予備費に多額の休眠資金が潜む。だが、時間に制約があるため、外為特会が目を付けられたのは道理だ。
外為特会の剰余金は5.4兆円(24年度決算)と過去最大に上る。円安と海外金利上昇により運用益が一段と拡大した。剰余金のうち3.2兆円は25年度一般会計当初予算に繰り入れられ、うち1兆円が防衛費増の財源に充てられる。
この一般会計繰り入れは、特別会計法により剰余金の7割とされている。これを1年間限定で全額を食品消費税の減税財源とする、あるいは既に予算に組み込まれた防衛費増向けの1兆円を除く全額を減税財源に充てる。
さらに剰余金の全てを一般会計に繰り入れ、減税財源に充てる臨時措置も考えられる。25年度決算では、外為特会の剰余金は円安などから前年度より増え、ホクホク状態が一層進むのは間違いない。
この剰余金使途の思い切った政治決断で、減税財源の全て、もしくは大半を一気に確保できるだろう。埋蔵金を死蔵させてはならない。この財源捻出を機に、特別会計全ての予算執行状況を「見える化」し、ムダをことごとく省く必要がある。