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北沢栄(共著/高橋章編)
『近代日本のキリスト者たち』
パピルスあい■本体2800円+税


 本書は2003年から2004年までの2年間、「福音宣教」誌(オリエンス宗教研究所刊)に「明治を生きたキリスト者たち」、「近代日本を築いたキリスト者たち」というテーマで連載された、明治時代から現代までに近代日本に多大な影響を及ぼした著名または無名のキリスト者たち23人の小伝である。
 いずれもカトリック、正教、プロテスタント、無教会派として、その活動ぶりは多岐にわたった。
 明治時代にキリスト教を宣教し、東京の神田駿河台に「福音の器」としてニコライ堂を建立したニコライ、二つのJ(JesusとJapan)を愛すると述べ、聖書研究を深めて戦争の絶対廃止を唱え、無教会主義者となった内村鑑三。 内村と同じく札幌農学校のクラークの影響を受けて東京女子大学学長など教職を経て発足直後の国際連盟事務局次長を務め、武士道をキリスト教に接ぎ木しようとした新渡戸稲造、同志社大学を設立した教育者の新島襄、満州事変が日本の仕業によるものと見抜き軍国主義と対決して東大教授を追われた矢内原忠雄・・・。

 北沢は、ニコライを取り上げた。日露戦争(1904年2月〜05年10月)で国粋主義が暴発し「愛国・反ロ」の嵐を受けるまで、ニコライ堂の鐘の音が人々の心に響き、郵便は「日本、東京、ニコライ」で届いたほどニコライの存在は知れ渡った。 正教会が最盛期を迎えた1901(明治34)年に、信徒数は3万5000人余りに上る。神学校ではロシア語で神学を専修したため、トルストイの「アンナ・カレーニナ」やチェホフの傑作集がこの神学校から生まれる。 「単独」の宣教者ニコライの波乱に満ちた生涯の軌跡を追った。




本書に登場するキリスト者は以下の通り

ウィリアムズ―日本聖公会の開祖
ニコライ―「単独」の宣教者
津田仙―日本と韓国において福音の実を結ばせた人
マラン―東北縦断旅行―明治初年の下北半島から東京まで
新島襄―伝道と教育の人
ケーベル―学生に心酔された教育者
植村正久―卒業のない生涯
内村鑑三―福音の使者 その現代的意義
新渡戸稲造―武士道とキリスト教
別所梅之助―讃美歌編集と聖書文語訳に貢献した詩人牧師
山室軍平―平民の使徒の生涯
逢坂元吉郎―エキュメニズムを推進するうえでの善き模範者
高倉徳太郎―「福音の真理の全人格的徹底と交わりの実現」に生きる
賀川豊彦―「社会実践的なキリスト教」に生きる
田中耕太郎―戦前から戦後におけるカトリシズムの実践者
矢内原忠雄―軍国主義と戦った平和を愛する人
八木重吉―詩人とキリスト教
赤岩栄―その記憶と共に
吉満義彦―詩人・哲学者
今官一―故郷・津軽の風土と群像
森有正―「経験」と信仰
鷲巣繁男―正教詩人として生きる
遠藤周作―その文学におけるキリスト教





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