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矢野直明
『サイバーリテラシー概論』
IT社会をどう生きるか

地泉書館■本体2200円+税
インターネット社会の全貌を明かす!恰好のテキスト




「サイバーリテラシー」は著者がここ8年ほど、主張し続けているIT社会の生き方(IT社会を生きる能力)だが、一応の体系化ができた機会をとらえて、あらためてサイバーリテラシーを世に問うべく出版された。
 著者は2007年4月から「サイバー大学」教授として、「サイバーリテラシー概論」を講義している。本書はその準備ノートを元にした、大学生、高校生、およびIT社会の今後に関心を持つ一般の人びとに向けた教科書でもある。



 柱は、すでに公表している「サイバーリテラシー3原則」と、今回、明示された「サイバー空間」と「現実世界」の3態様の図版である 。
 現代社会における「サイバー空間」と「現実世界」は、メビウスの環のように、あざなえる縄のごとく、複雑にからみあっており、「サイバー空間」が「現実世界」に及ぼす影響は、いよいよ強く、かつ広範になっている。

 著者は、情報リテラシーとは区別されるべきサイバーリテラシーについて解説したあと、1690年代末からのインターネットの歴史を概観、その技術的背景にもふれながら、現代社会を理解するための基本的な用語や出来事を丁寧に解説している。そのうえで、2006年に話題になったWeb2.0というインターネットの新潮流の意味について考察している。
 読者は、「ロングテール」、「フラットな世界」、動画配信サイト「ユーチューブ」、三次元情報空間「セカンドライフ」などの新事象がもたらす意味について勉強するうちに、現代社会の複雑な状況を理解できるようになっている。
 技術・ビジネス、事件・事故、法律、書籍その他という項目ごとに整理された、巻末の「サイバーリテラシー関連年表」は、現代という時代を概観するために便利である。

 これからのIT社会をより豊かで実りあるものにするために、著者が重視しているのが「情報倫理」である。これはあくまで「サイバーリテラシー」とセットの関係にあり、著者は「情報のデジタル化が引き起こす問題に有効に対応するための倫理的課題を探る」ものと位置づけられている。著者がめざすものは、「サイバー空間」と「現実世界」ほどよい共存をめざすための社会的合意でもある。


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