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矢野直明
『情報編集の技術』
岩波アクティブ新書■本体価格 700円

「サイバーリテラシー」は現代人の「読み書きそろばん」でもある、との考えのもとに、「万人が編集者となる時代」の「編集の技術」の具体的ノウハウを提供しようと試みた「サイバーリテラシーの実務書」。



 デジタル情報社会とは、私たちだれもが、他人から送られてきた情報をただ受け取るばかりでなく、みずからもまた情報を自由に発信できる社会のことである。これからは、まちにあふれる情報を自分の責任で取捨選択し、それを組み立てなおし、社会に投げ返していくといった編集作業を、だれもがごく日常的に行うことになる。

 これまでは、雑誌や書籍などのプロの編集者以外は、編集ということをとくに考える必要がなかった。情報は送り手たるプロによって編集され、受け手に完成品として届けられたからである。急速に進む多メディア化、社会の総メディア化は、私たちに多くの情報をもたらすが、それら多様な情報から好みのものを選び出す作業は、むしろ受け手にゆだねられる。別の見方をすれば、パソコンなどの高機能な情報機器が、受け手段階での編集作業を可能にしたともいえよう。 第一部「みんなが編集者になる時代」、第二部「デジタル技術が編集をやさしくする」、第三部「いまも変わらぬ編集のかんどころ」、第四部「電子メディアと紙のメディア」からなる。第三部では具体的な体験談やエピソードをふんだんに盛り込み、企画の発想、タイトルや見出しのつくり方、文章やインタビューの取り扱いなど、具体的な技術が紹介されている。第四部では、紙のメディアと電子メディアの間には決定的な違いがあり、紙のメディアの類推で電子メディアを考えることはできないが、同時に、紙のメディアで培われた編集技術の多くを、電子メディアに生かすことができるのも事実であるといった著者の考えが、新聞、雑誌、電子メディアといくつかのメディアにかかわってきた体験のもとに述べられている。


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