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北沢栄
金融小説『ダンテスからの伝言』
全日法規■本体価格1600円
『中国新聞』98年11月8日付書評より

 長信銀系大手銀行に勤める谷は、子会社ノンバンクに出向を命じられ、前部長の失そうを知る。前部長には顧客からの大金を横領した疑いがあったが、刺殺体で発見される。事件の真相究明を続ける谷は、大蔵OB、暴力団を巻き込んだ頭取の犯罪を突き止め、被害者らと連携して復しゅう劇「ダンテス計画」の実行にとりかかる。
 圧巻は、インターネットのホームページを使った金融犯罪のディスクロージャー。不正融資、不良債権隠しや飛ばしなどの金融犯罪が暴かれる。

『週刊エコノミスト』98年11月24日号書評より

 長信銀大手という設定の日本殖産銀行の、系列ノンバンクを舞台にした金融犯罪を扱ったフィクション。
 この銀行はノンバンクをトンネル会社にして不動産融資を積極的に行い、揚げ句の果てに暴力団との事件に発展。銀行は事件の揉み消しに奔走する。一方で銀行は、不良債権隠しを図って金融子会社を作り、そこに不良債権を高値で買い取らせる。一連のことを裏で操るのが大蔵OBで、銀行に天下ってきた人物だ。 小説とはいえ、現実の金融問題のいろいろな局面で出てきた構図でもある。長信銀の日本長期信用銀行が国家管理の銀行になるきっかけも、ノンバンクを通じた不動産融資であり、読み進むにつれ、現実とオーバーラップしてくる。 現実と違うのは、ある銀行員が同志とともに復讐すること。それも、インターネットを使って株主総会直前に暴露する「きわめて平和的な信用剥奪」だ。「ダンテス」とは、『巌窟王』の主人公エドモン・ダンテスからとった復讐計画の名前である。


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